発達障害とは

 生まれつき持っている脳の性質・機能・発達に偏りがあることによって起こる、言語や行動・情緒などの特性を「発達障害」といいます。大きく下の3つのタイプに分けられます。
・自閉スペクトラム症(ASD)*
・注意欠如多動症(ADHD)
・学習障害・限局性学習症(LD・SLD)

*以前は、自閉症・アスペルガー症候群といった診断名が使用されていました。
アメリカ精神医学会のDSM-5第5版(2013)以降、障害の度合いに関わらず連続した(スペクトラム)障害である、という見解に統一されています。 

 

POINT 1. 脳機能障害に起因

本人の努力不足や、家族の関わり方が原因で引き起こされる障害ではありません。独特な認知・感覚をもっているため、周囲はそれらを正しく理解してあげつつ、社会適応できる より良い発達へと導いてあげる必要があります。

POINT 2. 必要な発達課題

「脳の機能障害」ゆえ、本人の意思で適切に判断・行動できないことが多くみられます。脳機能を正しく発達させてあげることにより、情報キャッチ・運動出力がスムーズになっていきます。
乳児期の「原始反射」が適切に組替えられていないことも、特異な行動の原因です。発達段階に応じた体全体のトレーニングに並行して取り組むことにより、言葉の学習が進みます。


3つの大きな特性

 

 

  ①愛着形成・人間関係の難しさ(社会的相互交渉の質的障害)
  • 視線が合いづらかったり、人との情緒的交流が難しく避けたりすることがあります。 人間関係を嫌っている訳ではなく、その必要性・心地よさへの感受性が乏しいためです。そのため、愛着行動が乏しく、馴染みない環境に置かれても親を探さず平気なように見えたりします。 また「感情」認知が弱いため、自分の気持ちをとらえられなかったり、ましてや人の表情・雰囲気から、行動を変えることは大変苦手です。 乳児期の段階ですでに、保護者との愛着を正常に育むことが難しいケースも多々あります。「人・相手」のとらえ方が独特であるためです。周囲とのより良い関わり方を、トレーニングを通じて育んでいきます。

 

 

 

 

②コミュニケーションのとりづらさ(同質的障害)   
  • 発達障害をお持ちの方は、発語の少ない場合も、流暢に話せる場合も、言葉の遅れだけでなく認知の偏りがみられます。 「どこ行ったの?」という質問に「ドコイッタノォ」とエコラリア(オウム返し)を返してしまうケースはよくありますね。日常会話の困難さから、うまく対人関係を構築することができません。 また、定型発達児3歳のもつ言語・概念理解力を超えることが難しいともいわれます。 「ごっこ遊び」「ルールのある遊び」「善悪判断」がわかりにくく、同年齢児との活動に興味をもてない傾向があります。 その一方「計算、漢字・国旗を覚える」など一定規則に従った記憶の得意な方もいます。

 

 

 

③特異的な行動(常同的・反復的な行動、関心、活動)   
  • 「ルーティン行動をしていると落ち着くみたい」「こだわりだから変えない方がいい」 と、本人に寄り添ってみたものの…その場は良かったけれど、徐々に行動が強固・顕著になってしまったことはありませんか? 発達障害の方は、言語認知力の未熟さゆえに 見た物・人・場面等の誘発刺激によりパターン化された行動をとってしまいがちです。 行動(運動)が先行してしまい、そこに「本人の思考・意思」がないとしたら? そのような行動が散りばめられた生活を続けることの弊害を想像してみて下さい。 また、特定の行動を変更・中止させられると、怒り出したりパニック・暴力に発展するケースもあります。そのようなこだわりは将来の生活を困難にするばかりで、周囲も疲弊してしまいます。計画的なトレーニングを通し、受け入れられる範囲を広げてあげることが大切です。

 

 



一つの特性が目立つからと言って、そこに特化しすぎた療育課題は子どもの発達にとって望ましくありません。

認知と体の発達、生活スタイル、周囲の関わり方…これらすべてが合わさった結果として、

「ルーティン行動」

「人間関係の難しさ」

「パニック」

「他傷・自傷」などの問題が起こっているからです。

 

”発達障害は認知の障害”ともといわれます。

ご本人の認知段階・認知傾向を正しく把握してあげることが、療育プログラムづくりに大切だと考えています。